現在、恋人達の守護聖人として知られる聖ウァレンチヌス(St.Valentinus)だが、 最近の研究では事実は全く正反対であることが明らかになってきている。 もともと聖ウァレンチヌスは三世紀後半のキリスト者だが、これまで記録には同名 で祝日も同じ聖人が二人おり、別の事跡不詳の修道士も存在が確認されるなど、謎の 多い聖人であった。これまでの定説では、聖ウァレンチヌスは当時キリスト教を迫害 していたローマ帝国の目を逃れ、キリスト教徒の恋人同士の婚礼を執り行っていたと され、そこから恋人達の守護聖人として人々に認知されることになったという。 しかし、近年新たに発見された資料によると事実は全くの逆、彼は女人禁制の修道 院の中で密かに恋人と逢い引きをしていた若い僧を容赦なく折檻していたことで有名 であったようなのだ。 当時の情勢に詳しい専門家に話を伺った。 「ありえることです。例えばイエスを刺したローマの百人隊長ロンギヌスですが、彼 はイエスの血を浴びることで盲目が治癒したという話があります。しかし、ローマ帝 国の百人隊長を盲目の人間がつとめる訳はなく、イエスを刺した罰で盲目になったと いうのが最初の説話だったのでしょう。それが、時代を経るうちに慈愛の神の精神に 沿うような形に変化したのだと思います。今回も同じような件ではないでしょうか」 どうやら、われわれの思っていたヴァレンタイン・デーは、大きなイメージ修正を 強いられることになりそうである。 (民明書房刊「知られざる初期キリスト教」より一部抜粋)
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