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君は北岡が起きるまで書斎で待つことにした。
目を通すべきものはいくらでもある。まず、君は他の 七大委員長(セクンダデイ)
の居住地を記した書類がないか探した。百年も地獄にいたので世事には疎いし土地勘もないのだ。 地獄から北岡の屋敷のすぐ近くに帰還したのはアリオクのサービスのようなものだろう。 あとは自分でやるしかない。
一時間もしないうちに君は北岡のアドレス帳のようなものを手に入れた。それを制服の懐にしまい込む。 残りの時間はこの百年のあいだに世階がどう変わったかを知ることに費やした。
幸いなことに古新聞の束が書斎にあったので、それに目を通した。
既知の階の事象を網羅した博物学集があったのでいくつか書棚から引き出した。
今の人々のメンタリティや文化を知るために通俗的な本も読んだ方がいいだろう。
すべてはこの狂った世階に早く馴染むためだ。 見知らぬ土地の見知らぬ文化の中で時の権力者に復讐を挑むのは馬鹿げている。 この世階に早く馴染んで、一刻も早く確実に復讐を成し遂げるのだ。
君は百年のあいだに培った鉄のような意志力で黙々と作業を続けた。
北岡高人が目覚めたのはちょうど日が沈む頃だった。

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