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復活は耐えがたい苦痛の中で行われた。
はじめは何も感覚がなかった。
徐々に無感覚は全身のかゆみにとって代わられ、
視力も思考力もない君はかゆみを抑えるために身体を転げ回してあたりのものにこすりつけた。
次第にかゆみは痛みになり、痛みは激痛になり、君はすすり泣きながら子供のように手足を丸めた。
これが復活の次第だ。
五感を取り戻し、全身の痛みが消えた君は両脚で立ち上がる。
さきほど死から甦ったばかりの君は、何も覚えていない。
頭部にひどい損傷を受けたために、複雑な脳組織の再生がまだ追いつかないのだ。
自分が何ものかを考えながら君は周囲を見回す。
君がいる場所はゴミ捨て場のようだ。あらゆる生活廃棄物が層をなし、異臭を放っている。
どうやらここは目の前に立つ洋風の屋敷のゴミを捨てる場所らしい。
このゴミ捨て場は広さが10m四方ほどの穴だ。深さは相当あったのだろうが、
長いあいだ捨てられ続けたゴミは地面に近い高さまで積み上がっている。
こちらから見える屋敷の面には左の隅に扉が一つだけついており、そこからゴミを捨てているようだと君は判断した。
あたりには様々なゴミが積み上がっており、一歩踏み出すたびに足が膝まで沈む。
かつて食べ物だったもの。壊れた家具。衣服の切れ端。死んだばかりの死体が二つ。
君は死体に目をやって、着ている服が自分のものとほぼ同じ色と形状をしているのに気が付いた。
それで思い出す。
あれは高校の制服で、彼らは自分が殺したのだと。
君の鼻先を蠅がかすめ飛んだ。
無造作に手で追いやった君は、その蠅が気になって行方を確かめる。
さきほど蠅が飛んでいった、屋敷の扉の所に一人の男が立っていた。
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