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君は階段を登っている途中、何か細い光の筋のようなものがひらめくのを見た気がした。
次の瞬間、君は全身から血を吹き出して階段を転げ落ちていた。
侵入者撃退用の罠に引っかかったのだ。
君の意識は急速に薄れ、階段の下に着く頃には死んでいた。
しばらくして君は復活する。
「ニバス」
痛みが完全に退いてから、君の
使い魔
に呼びかける。
「呼んだか。御主人」
君と一緒に転げ落ちていた朔月左文字のかたわらに黒猫が現れた。
「ああ呼んだ。さっきのあれは何かわかるか」
黒猫が答える。
「罠だ。デーモンが焼き付いている。知能の低いデーモンのようだ。
おそらく家人のみを選別して通すような芸はできまい。しかし単純なだけに破壊や突破は難しい」
どうやら階段を行くのは困難らしいと君は悟った。素手で外壁を登るほうがやさしいだろう。
しかし、この屋敷の住人がフリークライミングを日課にしているとは考えにくい。
どこか近くに罠を解除する仕掛けがあるはずだ。
30へ戻れ。